オマーンには飛地がある?ムサンダム半島の楽しみ方

オマーンに飛び地があること、ご存じでしょうか?ペルシャ湾からインド洋へ続くホルムズ海峡に突き出たムサンダム半島は、アラブ首長国連邦によって切り離され、オマーンのムサンダム総督府が置かれた飛び地になっているんです。
赤岩のハジャール山脈がそびえるアラビア海上、険しい断崖やフィヨルドが連なる海峡の要衝に位置します。マスカット発の高速フェリーと航空路で足を伸ばせば、イルカやクジラに出会える海から、化石や壁画が点在する高地まで、ほとんど手つかずの自然が広がっています。朝はマウンテンサファリとトレッキングで爽やかな絶景を眺め、昼はダウ船からの釣りやイルカウォッチングでのんびり過ごし、夜はビーチでのキャンプで自然を楽しみましょう。
本記事では、ムサンダム総督府のレジャーと名物6選をご紹介します。

①キャンプ

日中は暖かく、夜間は満天の星空の下で涼しい風が冷やしてくれる、キャンプに最適な場所です。ここではさまざまなツアー会社がコースを提供する、政府公認のキャンプ場をご紹介します。

●テレグラフ島

イギリス人が電信ケーブルを敷設したことからその名がついたテレグラフ島は、ムサンダム最高のキャンプ場のひとつと言われています。島の内側でのキャンプは禁止されていますが、好みの海辺でキャンプすることができます。穏やかで涼しい風と暖かい海に包まれたビーチで、島内を散策してみましょう。

●セビ島

セビ島にも穏やかなビーチがあり、キャンプやバーベキューが人気です。近くのフィヨルド探検は飽きません。

●バッサビーチ・キャンプ場

アタナ・カサブ・ホテル付近にも素晴らしいキャンプ場があります。近くのマーケットで買える新鮮な魚を調理することもでき、公衆トイレも含め無料で利用できます。

●アカシアの森キャンプ場

カサブからコー・ナジドに向かう道路を突き当たりまで走ると、サール・アラ近くで右手に見えるのがアカシアの森です。リラックスして過ごせる日陰のエリアで、トイレや水、シェルター設備もそろっています。舗装道路に近いスポットは人気のためかなり混雑しており、運が良いか早い時間に行かないと良い場所は確保できないかもしれません。

●マウンテンキャンプ

ムサンダム半島にはフィヨルドが連なり、高い山や涼しい断崖が連なっています。中でもジャバル・アル・ハリムとジャバル・ビル・アイスのちょうど中間地点は、車でのアクセスが良く、落ち着いてキャンプができる場所です。カサブからディバへ向かう道を20kmほど進んで未舗装路に入り、サヤ台地を5kmほど過ぎると、右側に円弧を描くコースに出ます。この道の両側でキャンプができるのですが、実はあまり知られていないため、穏やかに過ごしやすいスポットです。

●ホールナジュド

ホールナジュドはムサンダムで最も大きなラグーンの1つとされる、観光客の疲れを癒すスポットです。美しい山道を30分かけて進めば、標高420mの高さから、海と山に囲まれたラグーンの景色を楽しむことができます。

②ビーチと海岸道路

ティバットのUAE国境とカサブを結ぶ海岸道路(ハイウェイ2)は、ムサンダムとその外を結ぶ唯一の整備された陸路です。35km続く高速道路(車で約45分)では海の景色を楽しむこともできます。ブカの北3kmにあるアル・ジャディという村の手前には、ピクニックに最適なビーチが点在しています。手付かずの海ではイルカやクジラ、サメに出会うことができ、ダウ船からの釣りも楽しめます。

③石灰岩の山々

ムサンダム半島では、石灰岩の山々が連なる壮大な風景が見られます。カサブから出る半日程度のマウンテンサファリでは、観光ガイドがワディ・カサブジェベル・ハリムやジェベル・ハリムからラウダー・ボウルまでドライブしてくれるかもしれません。特に、標高2087mのムサンダム最高峰ジェベル・ハリム(女性の山)からの景色や、ワディ・ロウダ上の稜線ドライブは壮大なことで知られます。さらに20分ほどでジェベル・ハリムの山頂に到着します。この山の名前は、女性たちが敵対部族に連れ去られるのを避けるために、男性が漁業や貿易で長期不在の間、この山の洞窟に隠れていたことに由来しています。山頂付近の道路からはカサブやディバ方面の息を呑むような絶景を一望することができます。
近くの岩には古くに刻まれたペトログリフのコレクションがあります。状態の良い化石が見つかることでも知られており、山頂を過ぎた先には、カニやヒトデ、貝の輪郭がはっきりとわかるような化石の層でびっしりと覆われている岩もあります。ジェベル・ハリムを訪問するなら、山に囲まれたローダ村の散策もおすすめです。この村はローダボウルとも呼ばれ、古くから人が住んでいた証拠となる古い墓地が残されています。

④ペトログリフ

ムサンダムは、ペトログリフ(ギリシャ語で石の彫刻)のコレクションが非常に豊富な地域です。ムサンダムの多くのペトログリフの中で最もアクセスしやすいのは、ジェベル・ハリムの頂上にあるものと、ワディ・ティウィのものでしょう。マッチ棒のような人間の姿や、ガゼル、オリックス、アラビアヒョウ、さらには象に乗った人間と思われる絵なども見られます。

⑤ブカ要塞

イランとホルムズ海峡に面したブカ要塞は、目の前に海が、そのすぐ上に高い山がある美しい場所です。16世紀にポルトガル人によって建設されたのち改修され、現在のどっしりとした印象的な姿になりました。山に設置された見張り台から、最高の景色を写真に収めましょう。

⑥鍵の家

ムサンダム半島の山間部にあるほとんどの村には、少なくとも1つの「鍵の家(bait al qufl)」があります。これはアンティークの防空壕のような、この地域独特の建築です。「鍵の家」は、夏の間、山から海岸に出稼ぎに行っていたシェヒ族の移住生活に合わせて作られたものです。彼らは夏の間海岸に出稼ぎに行くため、持ち運べない貴重な財産を村に残して鍵をかけたのです。水やナツメヤシ、穀物などの食料を保管することが主な目的ですが、冬の間は居住空間としても利用されました。
鍵の家は、強度と安全性に重点を置いて設計されています。壁の厚さは1m以上にもなり、これにより夏は涼しく冬は暖かくなり、落石の脅威からも内部を守ることができます。ベイト・アル・クフルの高さは通常6~7m程度で、強度と安全性を高めるために床を地面から1mほど掘り下げるなど、丁寧な工夫が施されています。昔は頑丈な木の南京錠で固定されていましたが、現在はほとんどが開け放たれたままです。
ムサンダムには、シェヒ族、ダホリ族、クムザリ族の3部族が住んでいます。最大勢力のシェヒ族はかつて、外部には理解できない言葉を話し、山奥の洞窟や岩で質素な生活を送っていると言われ、神秘的ながら恐れられてもいたそうです。ジルズという柄の長い小ぶりの斧を持ち、武器と登山用の杖に用いました。シェヒ族は現在もカサブの支配的な一族で、オールドスークを中心として街の看板にはアル・シェヒの名をよく見かけます。現在では多くの人が隣国アラブ首長国連邦のラスアルカイマ(RAK)へと経済機会を求めて移住したため、RAK登録の車が街でもよく見られます。
シェヒ族は他のムサンダム族と同様、以前は季節ごとに移住し、冬は農作業や漁をし、夏はハサブでナツメヤシを収穫していました。しかし、オマーンの繁栄に伴い、シェヒ族をはじめとするムサンダムの部族、特にその若い世代は、先祖代々の厳しい伝統的生活を捨てつつあります。このためムサンダムの多くの村では過疎化が進み、住民はカサブや他の場所でより快適な生活を求めて旅立ちました。現在残る彼らの生きた跡は、鍵の家と放浪する山羊のみです。

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