べイト・アル・ズバイル博物館

べイト・アル・ズバイル博物館は、オマーンの伝統文化や生活様式を知ることのできる博物館です。数多くの展示品と丁寧な解説が魅力で、収蔵品は、ハンジャル(半月刀)や男性・女性衣装、ジュエリー、剣、コイン、切手、アンティークの地図などさまざまです。1999年にはオマーンで初めてスルタン・カブースの優秀建築賞を受賞するなど、建築としても高い評価を受けています。複合施設となっており、5つの独立した建物で展示品を見られるほか、数々の伝統的な特徴を持つ庭園、お土産を購入できミュージアムショップ、休憩できるカフェも併設されています。
1998年に元スルタン3人の大臣兼顧問であるシェイク・アル・ズバイル・ビン・アリの個人コレクションを展示する施設として始まったベイトアルズバイルは、博物館としてだけでなく、研究機関としても機能しています。詩歌や芸術、映画に関するのほか、若者へのセミナー、子ども向けの自然科学・人文科学・芸術分野の講義、翻訳活動と翻訳家への支援といったプロジェクトを主導しています。国際的な音楽や本のフェスティバルの開催、文化的な出版物も知られています。
収蔵品は、オマーンの伝統的な短剣であるハンジャル(半月刀)や男性・女性衣装、ジュエリー、剣、コイン、切手、アンティークの地図などさまざまです。ここではその一部をご紹介します。

①ハンジャル

ハンジャル(半月刀)は、オマーンで成人男性の証として腰につけられてきた伝統的な短剣です。各地のさまざまな年代のものが展示されています。伝統的に父から子へと受け継がれてきた熟練職人の手によって、ひとつひとつ丁寧に作られる貴重な品です。ハンジャルには、湾曲した鍛造鋼のブレード、角や樹脂のヒルト、木や革で作られた鞘があり、主に銀で装飾されていますが、金、革、糸で装飾されたものもあります。特に複雑で貴重な作品である、王家のハンジャルも置かれています。

②伝統衣装

男性の民族衣装はディシュダシャと呼ばれる長いガウンで、長袖で丸首、胸元の繊細な刺繍が特徴的です。地域ごとに異なる特徴を持ち、特に独特のスールとアル・ダヒラの製品も展示されています。女性の衣装は、8つの主要な地域それぞれにおける20世紀のドレスが展示されています。その土地の環境や融合し合う文化が生んだ複雑な刺繍が魅力です。
ちなみに、オマーンでは帽子にさまざまな意味があります。例えば、一般的にフサは王族が顔の左側に付ける決まりです。一般人でも国への貢献が認められると付けられることもありますが、王族のスタイルを避けて右側にかけます。マスカットスタイルは3層、南部では5層くらいなのだとか。フォーマルな場では複数層で丁寧に巻きますが、ラフに捻って付けることもあります。

③ジュエリー

オマーンの伝統的なジュエリーは主に銀で作られており、品質の高さで知られています。シルバー、ゴールド、クリスタル、カーネリアン、コインなどを使って、リング、ブレスレット、ネックレス、アンクレット、ヘッドドレスなど、さまざまな伝統的なジュエリーが作られてきました。花柄や幾何学柄、カリグラフィーと、聖なるコーランから着想を得ているのが特徴です。デザインのモチーフや技法は、インド、中国、ペルシャ、イエメン、古代ローマ帝国、ギリシャ帝国、鯖江帝国など、他国からの影響を受けており、海洋貿易国としてのオマーンの長い歴史が反映されています。
空洞で軽いアンクレットは、中にかけらを入れてカラカラと鳴ると楽しいそうです。また、ネックレスからかけるアクセサリーは結婚した時の年齢と同じ数にするという風習があったり、昔は赤い装飾がついていたら独身のサインだったりもしたそうです。

④切手

1階には世界中の切手コレクションが、2階にはオマーンの動植物を描いた美しい切手が展示されています。オマーンで発行された切手はまずインドのもの、次にパキスタン、そして東アラビアの英国郵政公社を経て、1971年1月16日にオマーン国として独自の切手を発行しています。

⑤書籍

貴重な書籍や写本が並ぶ書斎では、法律学、歴史学、夢占い、古典詩、クルアーンとその釈義など、貴重な書籍や写本が並んでいます。また、20世紀初頭にマスカットで書かれた物語や逸話を集めたシリーズも展示されています。パネル展示では、イスラム世界における書物の重要性を知ることができます。イスラム世界では公立・私立図書館で書物を容易に閲覧でき、戦時には身代金や戦利品として使われることもあったことが知られています。
図書館の書籍は世界中から収集されたもので、初期の貴重な写本も含まれています。テーマは宝飾品、武器、工芸品、芸術、建築、地理、考古学、歴史、政治、宗教、自然科学、社会科学、貨幣学、言語、詩、宗教に及び、特にアラビア半島に焦点を当てています。(*図書館の利用は予約制で、特定のテーマに関連する資料の収集を研究者に依頼することも可能です。)

⑥航海コレクション

航海国としてのオマーンに焦点を当て、アンティークの航海用具や精巧な船の模型、貴重な古地図も展示されています。
特に興味深いのは、はじめてマスカット周辺を正確に描いた地図「Terrae Oman」(オマーンの地)です。デンマークとノルウェーの王フレデリック5世が派遣した地理学者、カステン・ネイブールがマスカットに到着したとき、彼は最後の一人でした。5人の仲間は全員、長い船旅の間に病気で亡くなっていたのです。ネイブールは一人、地図製作に必要な距離を歩き、その歩数を記録することで独力で地図を完成させました。歩数で地理を測定するというのは、日本においても伊能忠敬が実践したことでで有名な手法です。彼が日記に記したメモやスケッチ、測定値によって、当時としては驚異的に正確な地図が完成したのです。

⑦家具

家具ギャラリーにあるのは、博物館の創設者ムハンマド・アル・ズバイルの父が所有していたものです。18〜20世紀にかけてオマーン特権階級に流通していた国際的な物品が並んでいます。マスカットの多くの家庭ではモダンなスタイルの家具が手に入るようになってからも古い家具を手放さなかったため、これらは貴重なセレクションとなっています。

⑧版画・絵画

アラビア半島初期の海図・地図、版画や絵画で構成されています。これらは西欧の地図帳や旅行記の中から見つかったもので、16世紀から20世紀にかけてのアラビア半島の最も古い記録の一つです。古く不正確な部分もありますが、重要な歴史的資料として扱われています。
最も古い版画は、1670年頃に旅行者が描きドイツで出版された、マスカットの風景です。他にも、東アフリカの風景を描いた版画もあります。オマーン人は、東アフリカに最初に移住したアラブ人の一集団で、7世紀には交易を通してイスラム教を広め、19世紀には東アフリカの大部分がオマーンの支配者によって統治されていました。このころ出版された東アフリカコレクションの版画が多く展示されているのです。

⑨美術館

展覧会・イベント会場として2011年に設立された美術館では、過去20年の間に構築された国内外のアーティストによる大規模な常設コレクションを収蔵しています。館内には、多目的シアター、4つのセミナールーム、展示ホールがあります。
作品は3つのフロアに展示されており、1階の作品はオマーンの作品や世界各国の国際展をローテーションで展示しています。コレクション全体で60人のアーティストの作品を含み、400点以上の絵画、写真、彫刻が、包括的なスタイルと媒体で展示されています。
オマーンの最も重要なアーティストの作品もここで見ることができます。アンワル・ソーニャ、サラ・ホワイト、ラバ・マフムード、マリアム・アル・ザジャリ、ハッサン・ミール、ムーザ・オマル、ジュマ・アル・ハーティ、ラディカ・ハムライ、エッサ・アル・マフラジなどがその代表です。

ご来館の際は、公式HPから情報をご確認ください。

https://www.baitalzubair.com

以下は2023年3月時点の情報です。 開館時間:土曜〜木曜の9:30〜18:00(金曜休館)
(祝日やラマダン期間には変動することがあります。)

入館料
大人: R.O 3.000

10〜15歳: R.O 1.000

10歳未満:無料

アクセス
マスカット国際空港から車で約30分、アルハラ宮殿の近くです。近隣には駐車場もあります。

団体予約
組織・企業・学校による団体予約をフォームから受け付けています。10〜15名の予約の場合、専属のガイドを伴うことができます。

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